騎士の誇りを胸に — ガンダム・キマリスヴィダールとは
ガンダムシリーズの歴史の中で、最も「復讐」を純粋に体現した機体を一つ挙げるとしたら、ガンダム・キマリスヴィダールが筆頭候補に上がるでしょう。
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期において、この機体は「ヴィダール」という謎の人物のもとで静かに登場しました。正体を隠したパイロット、素性を明かさない機体——しかし視聴者はすぐに気づきます。この機体の設計思想にも、このパイロットの戦い方にも、第1期で見せたガンダム・キマリスの系譜が色濃く流れていることに。
そしてその正体が明かされたとき、物語は最大の対立軸を獲得しました。ガエリオ・ボードウィン対マクギリス・ファリド——かつての親友が、命を懸けた宿敵へと変わる瞬間です。
この記事では、ガンダム・キマリスヴィダールの機体仕様から、キマリス系譜の全歴史、ガエリオとマクギリスの関係性、劇中の名場面、そしてガンプラ情報まで、徹底的に解説します。
キマリスの系譜 — ASW-G-66の歴史
キマリスヴィダールを理解するには、まずこの機体の前身である「ガンダム・キマリス」の歩みから把握する必要があります。ASW-G-66という型式番号を持つこのガンダムフレーム機は、物語を通じて4つの異なる形態をとりながら、ガエリオ・ボードウィンという一人の貴族の運命と深く絡み合って進化し続けました。
ガンダム・キマリス(ASW-G-66)— 序列第66位の騎士
厄祭戦時代に製造された72機のガンダムフレームのうちの1機。ソロモン72柱の悪魔の中で第66位に位置する「キマリス」——20の大隊を率い、白馬に乗った騎士の姿で現れ、武技を愛し、論理と言語を人間に教えたとされる大公——その名を冠する機体です。
「騎士」の名に恥じない機体コンセプトは、キマリスのデザインに明確に表れています。細身でシャープなシルエット、機動性を重視した設計、そして後述する突撃槍(ランス)を主武装とする戦闘スタイルは、まさに宇宙を駆ける騎士のようでした。
厄祭戦後、ガンダムフレームの多くが各地に散らばる中で、キマリスはギャラルホルン七星家のひとつ、ボードウィン家の所有となります。ボードウィン家が「キマリスの騎士」として代々この機体と共にある伝統を持ち、ガエリオはこの機体を家の誇りとして継承しました。
ガンダム・キマリス 基本スペック
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 型式番号 | ASW-G-66 |
| 分類 | ガンダムフレーム採用モビルスーツ |
| 所属 | ギャラルホルン(ボードウィン家) |
| 頭頂高 | 18.5m |
| 本体重量 | 33.3t |
| 動力 | エイハブ・リアクター×2(ツインリアクター) |
| 装甲材質 | ナノラミネートアーマー |
| フレーム | ガンダムフレーム |
| パイロット | ガエリオ・ボードウィン |
主な武装
- ドリルランス(突撃槍型近接格闘兵器)
- デストロイヤーランス(遠距離射撃形態への変形機能付き)
- ビームライフル
キマリスの最大の特徴は、ドリルランスを使った高速突撃戦法です。ガンダムフレームの高出力を活かした驚異的な加速力で敵に接近し、ドリルランスを叩き込む——ビーム兵器が無効化されやすい鉄血世界において、この突撃戦法は非常に有効でした。
第1期では火星でのバルバトスとの激突、宇宙での追跡戦など、ガエリオの指揮官としての実力とキマリスの性能を見せつけましたが、最終的にはマクギリス・ファリドの裏切りによってガエリオは重傷を負い、キマリスは大破。ガエリオ自身も生死不明のまま物語から退場したように見えました——第1期では。
ガンダム・キマリストルーパー — 地上戦への適応
第1期の途中から登場したキマリスの改修形態。「トルーパー」とは騎馬兵・機動歩兵の意味で、宇宙戦を主とした基本形態から地球の重力環境に対応した仕様へと改修されています。
ガンダム・キマリストルーパー 基本スペック
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 型式番号 | ASW-G-66 |
| 所属 | ギャラルホルン |
| 頭頂高 | 18.5m |
| 本体重量 | 35.0t(推定) |
| 特徴 | 地上戦対応改修、脚部スラスター強化 |
宇宙用の推進システムを地上戦向けに換装し、脚部に高出力スラスターを追加。重力下での機動性を大幅に向上させた改修内容です。武装はキマリス本来のドリルランスとビームライフルを継続使用。
エドモントン攻防戦では、このトルーパー形態でガエリオが戦場に立ちます。鉄華団の三日月・オーガス(バルバトス第6形態)との接触、そしてマクギリスの「反逆」——キマリストルーパーはこの悲劇の舞台に立った機体として記憶されています。
マクギリスがガエリオを刺した瞬間、キマリストルーパーも事実上の「終わり」を迎えました。ガエリオは瀕死の状態でコクピットを脱出し、ギャラルホルンの軍事施設で長期にわたる治療と蘇生処置を受けることになります。
ガンダム・ヴィダール — 謎に包まれた第2期の刺客
第2期から登場した、素性不明の機体。正式名称はガンダム・ヴィダール(ASW-G-XX)。北欧神話に登場する「沈黙の神」ヴィーザルに由来するとされる名を持ち、ギャラルホルンとも鉄華団とも距離を置くように見える謎の第三勢力「ヴィダール」のリーダーが搭乗しています。
この「ヴィダール」なる人物の素顔は長らく隠されており、ガエリオ・ボードウィン——つまり第1期で死亡したと思われていた人物——であることが、物語が進むにつれて明らかになっていきます。
ガンダム・ヴィダール 基本スペック
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 型式番号 | ASW-G-XX(推定) |
| 所属 | ヴィダール(独立組織) |
| 頭頂高 | 18.9m(推定) |
| 動力 | エイハブ・リアクター×2 |
| 特徴 | ダークブルーの機体色、内部構造は後にキマリスフレームと判明 |
ヴィダールはキマリスとは異なる外見を持ちながら、その内部にキマリスのフレームを使用していることが後に判明します。ガエリオがキマリスの残骸をベースに独自改修を施し、正体を隠すために外観を大きく変えた機体——これがヴィダールの正体でした。
ヴィダールの最大の特徴として注目されるのが、「特別な動力源」の存在です。通常のガンダムフレームとは異なる反応を示すこの機体の動力源の謎は、物語が進むにつれて残酷な形で明かされます。
「俺は、アインに義手を持たせ、ここまで来た」
この言葉がすべてを語っています。ヴィダールの「特別な動力源」——それは、第1期でギャラルホルンのために命を懸けて戦い、バルバトスとの激闘で肉体の大部分を失ったアイン・ダルトンの意識と身体の一部でした。
阿頼耶識Type-Eとアイン・ダルトンの謎
アイン・ダルトンとは
アイン・ダルトンは、第1期でギャラルホルンに所属していた元パイロットです。ハーフ出身(人間とマーズネイティヴの混血)という出自から差別を受けながらも、ギャラルホルンへの忠誠を貫いた人物。彼が心から慕った上官がコーラル・コンラッドでした。
コーラルが鉄華団との戦いで死亡した後、アインはその復讐のために阿頼耶識の強制施術を受け、グレイズ・アインというカスタム機体と文字通り「融合」します。その戦闘力は凄まじく、第1期クライマックスのエドモントン戦でバルバトス(第6形態)と死闘を繰り広げました。
しかしアインはバルバトスに敗北。生命活動は維持されたものの、身体は極度のダメージを受け、もはや通常の人間としての生活は不可能な状態でした。そのアインの「残骸」を、ガエリオは引き取っていたのです。
阿頼耶識Type-Eの設定
通常の阿頼耶識システムは、パイロットの脊髄にナノマシン端子を埋め込むことでMSと神経を接続するものです。しかし阿頼耶識Type-E(Type-Enhanced / Type-Extreme とも)はその発展型であり、より深いレベルでの人機融合を実現します。
アイン・ダルトンの場合、身体能力の大部分を失った後も、その神経系と意識の一部がヴィダール——そしてキマリスヴィダール——の動力系・制御系に組み込まれた形になっています。
具体的には以下のような状態です。
- アインの脳・神経系の一部がキマリスヴィダールのコンピュータと統合されている
- 機体の制御に、アインの「戦闘経験」と「判断力」が反映される
- ガエリオがパイロットとして操縦する際、アインの能力が機体性能として上乗せされる
- アインは意識があるとも、ないともいえない曖昧な状態で機体に「内在」している
この設定は、『鉄血のオルフェンズ』が一貫して問い続けるテーマ——「人間と機械の境界線はどこか」——に対する、最も極端な答えの一つです。三日月が阿頼耶識でバルバトスと脳神経をつなぎ、搭乗中だけは五体満足になれる一方で降りると障害が残るのと同様に、アインは機体の中にしか「存在」できない状態になっています。
ガエリオはアインをそのような形でしか保てなかったことへの複雑な感情を持ちながらも、「共に戦う」という選択をしました。アインが生前に求めていたもの——上官への忠義、コーラルの仇を取ること、そしてギャラルホルンへの貢献——をガエリオは自分の復讐に重ね合わせていたのかもしれません。
「お前の力を、もう少しだけ貸してくれ、アイン」
第2期でガエリオが口にするこの言葉には、戦友への懺悔と、それでも前に進むしかない覚悟が凝縮されています。
ガンダム・キマリスヴィダール — 復讐の完成形
ヴィダールとキマリスが一体であることが明かされた後、機体は正式にガンダム・キマリスヴィダールとしてその全容を現します。ガエリオの復讐の意志と、アインの戦闘能力と、ボードウィン家の騎士の誇りが三位一体となった機体——それがキマリスヴィダールです。
基本スペック
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 型式番号 | ASW-G-66 |
| 正式名称 | ガンダム・キマリスヴィダール |
| 分類 | ガンダムフレーム採用モビルスーツ(改修機) |
| 所属 | ギャラルホルン(ヴィダール隊) |
| 頭頂高 | 19.0m(推定) |
| 本体重量 | 36.8t(推定) |
| 動力 | エイハブ・リアクター×2+阿頼耶識Type-E(アイン統合) |
| 装甲材質 | ナノラミネートアーマー |
| フレーム | ガンダムフレーム(キマリスフレーム改) |
| パイロット | ガエリオ・ボードウィン(ヴィダール) |
| 初登場 | 第2期第5話(通算第31話)付近(ヴィダール名義)→第2期後半でキマリスヴィダールとして顕現 |
キマリスヴィダールのデザインコンセプト
キマリスヴィダールのデザインは、キマリスの流線型で騎士的なシルエットを継承しながら、より重厚感と戦闘的な雰囲気を加えたものになっています。
- ダークカラーリング: キマリスの白を基調としたカラーから、濃いグレーと深みのある紺色が主体になった。これは「正体を隠す」というヴィダール時代の性格を引きずっている
- フェイスデザインの変化: キマリスの騎士的な顔から、より怒りを含んだような鋭い目つきへ
- 武装の刷新: ドリルランスを主軸としたキマリスの戦法を継承しながら、強化・拡張されている
- 背部スラスターの大型化: 突撃戦法の要である加速性能がさらに向上している
武装一覧 — 突撃の騎士が持つ鋭き槍
キマリスヴィダールの武装は、キマリスから受け継いだ「突撃騎士」のコンセプトを中核に置きながら、格段に強化・多様化されています。
キマリスヴィダール 武装比較表
| 武装 | 種別 | 特徴 |
|---|---|---|
| グングニルランス(改) | 近接/射撃複合 | 主武装。ドリルランスの発展形。貫通力が格段に向上 |
| ヴィダール・クロー | 近接格闘 | 両手に装備された鉤爪型武装。掴む・引き裂く動作が可能 |
| スラスターユニット | 推進装置 | 背部の大型スラスター。突撃加速の要 |
| ガントレット(シールド兼用) | 防御/打撃 | 前腕部装甲。防御と近接打撃を兼ねる |
| 内蔵型実弾砲 | 射撃 | 胸部・肩部に内蔵された補助射撃装備 |
グングニルランス — 貫通する復讐の槍
キマリスヴィダールの主武装にして、この機体の象徴的な武器。グングニルとは北欧神話の最高神オーディンが持つ魔槍——「必ず標的に命中し、必ず致命傷を与える」とされる投擲槍の名称です。機体名の「ヴィダール」も北欧神話由来(沈黙の神ヴィーザル)であることから、武装と機体名が同じ神話体系から取られているのは意図的なものでしょう。
キマリスのドリルランスが先端部の回転機構で貫通力を得る仕組みだったのに対し、グングニルランスはより多段的な機構を持ち、装甲への貫通能力が大幅に向上しています。また、ランスの軸部には高出力エネルギー放出機構が内蔵されており、突き刺した状態でエネルギーを放出することで、単純な物理貫通だけでなく内部破壊も同時に行うことができます。
この武装の設計思想には、マクギリス・ファリド(バエル)という標的が意識されていたことが示唆されています。バエルはガンダムフレームの中でも特に高い基本性能を持つ機体です。そのバエルに対して確実にダメージを与えるためには、ナノラミネートアーマーを貫通できる高い貫通力が必要不可欠でした。
ヴィダール・クロー — 騎士から野獣へ
両前腕部に装備された鉤爪型の近接武装。「クロー(爪)」という名の通り、引き裂くことに特化した形状をしています。
キマリスの時代、ガエリオの戦闘スタイルはランスによる正面突撃が主体でした。しかし復讐者となったガエリオは、その戦い方を変えました。正面からランスで貫くだけでなく、クローで相手を掴み、引き寄せ、組み合う——より「怒り」を感じさせる戦い方です。
このクローは、マクギリス・バエルとの最終決戦で特に重要な役割を果たします。
スラスターユニット — 突撃戦法の心臓
背部に装備された大型スラスターユニットは、キマリスヴィダールの最重要装備の一つです。ガンダムフレームの標準スラスターに加え、この大型ユニットが提供する爆発的な推進力が、グングニルランスによる突撃戦法を可能にしています。
通常のMSでは機動性の限界から避けられるような接近速度でも、キマリスヴィダールは実現できます。その速度は、相手が反応する前に懐に入り込める——それがキマリス系列機が一貫して持つ「強さの本質」でした。
パイロット — ガエリオ・ボードウィンとマクギリスの関係
ガエリオ・ボードウィンのプロフィール
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 名前 | ガエリオ・ボードウィン |
| 第2期変名 | ヴィダール |
| 声優 | 河本啓佑 |
| 出身 | 七星家ボードウィン家 |
| 所属 | ギャラルホルン(第1期)→ヴィダール隊(第2期) |
| 搭乗機 | ガンダム・キマリス → キマリストルーパー → ヴィダール(キマリスヴィダール) |
親友から宿敵へ — ガエリオとマクギリスの関係
ガンダム鉄血のオルフェンズを語る上で、ガエリオとマクギリスの関係性は物語の核心部分の一つです。
二人はギャラルホルンの士官学校時代からの親友でした。貴族の子弟として厳しい訓練を積みながら共に成長し、お互いを深く信頼していた——少なくともガエリオはそう信じていました。
マクギリスの真の目的は、第1期終盤で明らかになります。彼はギャラルホルンの腐敗した構造を打ち壊すために、ガンダムフレームの最高峰「バエル」に乗ってギャラルホルンを牛耳ることを計画していました。そのためなら手段を選ばない——旧友ガエリオも、その計画の「障害」として処理される存在に過ぎなかったのです。
エドモントン攻防戦の終盤、マクギリスはガエリオに迷わず刃を向けました。
「マクギリス、お前は…!」
「さようなら、ガエリオ。君のことは好きだったよ」
この台詞は、マクギリスが本当にガエリオを「好いていた」ことを示しながら、それでも計画のために切り捨てる冷徹さを同時に表現しています。感情と理性が乖離した人物——それがマクギリスでした。
一方のガエリオにとって、この裏切りは単純な「友人への失望」ではありませんでした。彼はすべてを失いました——信頼、地位、所属組織、そして自分が正しいと信じていた世界への確信。瀕死の状態から回復したガエリオが動き始めたのは、純粋な復讐心からでした。
第2期のガエリオ(ヴィダール)— 復讐者の孤独
第2期でヴィダールとして再登場したガエリオは、第1期とは別人のような冷静さを身につけています。感情的で真っ直ぐだった貴族の青年は、長い療養と復讐の準備期間を経て、目的のためなら誰とでも手を組み、感情を封印できる「道具」のような人間になっていました。
しかしその変化の下には、消えることのない怒りと悲しみが燃え続けています。マクギリスへの復讐を遂げるまでは死ねない——それだけが、ガエリオを動かしていた原動力でした。
第2期でのガエリオは、マクギリスの動向を監視しながら好機を待ちます。彼は単独でマクギリスを倒すのではなく、マクギリスの計画を骨の髄まで理解した上で、最も効果的なタイミングで復讐を遂げることを選びました。
三日月・オーガスとガエリオの邂逅
第2期でガエリオは三日月・オーガスとも再び相対します。第1期では敵として戦った二人の関係性も、第2期では微妙に変化します。
ガエリオの目的はあくまでマクギリスです。マクギリスの反乱計画を阻止することが自分の使命——そのためには、マクギリスの最大の協力者である鉄華団とどう向き合うかを決める必要がありました。
三日月はガエリオの正体を知り、ある意味で理解します。目的のために戦い続ける存在——それは三日月自身と重なる部分がありました。最終的に二人は敵対関係にありながらも、純粋な戦闘能力への相互尊重が生まれていきます。
作中での活躍 — ヴィダールからキマリスヴィダールへ
第2期序盤 — 謎の勢力「ヴィダール」の登場
第2期が始まると、ギャラルホルンとも鉄華団とも距離を置く謎の組織「ヴィダール」が現れます。リーダーの「ヴィダール」は顔を隠し、素性を明かさない。しかしその指揮能力と機体(ガンダム・ヴィダール)の戦闘力は並外れており、ギャラルホルン内部の情報を精確に把握しているように見えます。
マクギリスはヴィダールの正体に早い段階で気づいていたと思われますが、あえて泳がせます。ガエリオの復讐心は、マクギリスにとっては計算に入れてあった要素でした——それほど、マクギリスは冷酷な計算者でした。
一方のガエリオ(ヴィダール)は、ギャラルホルン内でマクギリスが着実に権力を固めていくのを見ながら、自分の準備も整えていきます。ヴィダール隊という独自の組織を持ち、機体を改修し、アインの「力」を自分の中に取り込む——すべては復讐の一点に収束していました。
中盤 — 鉄華団との攻防
第2期中盤、ヴィダール隊は鉄華団と接触します。マクギリスが鉄華団を自分の「剣」として利用しているように、ガエリオも鉄華団との関係をどう設定するかを慎重に考えていました。
ガンダム・ヴィダール対バルバトスルプスの戦闘シーンは、第2期前半の最大の見せ場の一つです。かつての宿敵——ガエリオは三日月を個人的に恨んでいるわけではありませんが、マクギリスの盾となっている鉄華団と戦う必要があります。
「三日月・オーガス。お前とは恨みがない。だが、道を譲るわけにもいかない」
この場面では、ヴィダール(ガエリオ)の複雑な立場が凝縮されています。本当の敵はマクギリスであり、三日月との戦いは「手段」に過ぎない——しかしその「手段」として戦う姿にも、ガエリオの誇りと覚悟が滲んでいます。
後半 — 正体の開示とキマリスヴィダールの顕現
物語後半、ガエリオはヴィダールの仮面を脱ぎ、本名と正体を明かします。ガンダム・ヴィダールがキマリスのフレームを使っていることが公式に認められ、機体もガンダム・キマリスヴィダールとして設定が確定。
ガエリオの正体が明かされることで、第2期の人間関係図が明確になります。
- マクギリス(バエル): ギャラルホルンの改革を掲げながら実際は独裁を目指している
- ガエリオ(キマリスヴィダール): マクギリスへの復讐のために動く
- 三日月・オーガス(バルバトスルプス→ルプスレクス): マクギリスの盟友として鉄华団と共に戦う
この三つ巴の構図の中で、キマリスヴィダールは「正義と悪の間のどこにも属さない、純粋な復讐の機体」として異彩を放ちます。
名場面・名台詞 — 復讐の騎士が残した言葉
「俺の正体を確かめに来たのか、マクギリス」
第2期後半、ガエリオがマクギリスに直接対峙する場面での台詞。ヴィダールという仮面を捨て、ガエリオ・ボードウィンとして——かつての親友の前に立つ瞬間です。
マクギリスの顔に浮かんだのは、驚きでも恐れでもなく、どこか安堵したような表情でした。計算し尽くしてきたマクギリスが、唯一計算しきれなかったもの——ガエリオへの感情がそこにあったのかもしれません。
「生きていたか、ガエリオ」
「ああ。お前を殺すために生きていた」
このやり取りは、鉄血のオルフェンズ全体でも屈指の名シーンです。感情をすべて封印したように見えるガエリオが、マクギリスに会った瞬間だけは「人間」の顔を取り戻す——その微妙な表情の変化がアニメーションとして丁寧に描かれていました。
「アイン、俺の力になってくれ」
機体の中にアインの意識が宿っていることを確認しながら、ガエリオが言い聞かせる台詞。自分一人の力ではマクギリスに届かないと知りながら、亡き戦友の力を借りることへの申し訳なさと、それでも前に進むための誓いが込められています。
アインはもはや返事もできない状態ですが、ガエリオには「伝わっている」という確信がありました。この関係性は、三日月とバルバトスの阿頼耶識による「共鳴」とは異なる、もっと人間的な「意志の継承」として描かれています。
キマリスヴィダール対バエル — 最終決戦の一幕
マクギリスのバエルとガエリオのキマリスヴィダールの直接対決は、第2期クライマックスの中核をなす場面です。
二つのガンダムフレーム機が激突する——この「親友同士のガンダム対決」は、鉄血のオルフェンズが用意していた最大のカタルシスの一つでした。
バエルはガンダムフレームの中でも高い基本性能を誇り、マクギリスの卓越した操縦技術が加わることで圧倒的な戦闘力を発揮します。対するキマリスヴィダールはアインの阿頼耶識Type-Eによる性能向上を持ちますが、純粋な性能差ではバエルに及ばないかもしれない——それでもガエリオは退かない。
「マクギリス! お前の計画も、お前の野望も、お前の未来も——全部、俺がここで終わらせる!」
この台詞と共にキマリスヴィダールがグングニルランスを構え、スラスターを全開にして突撃する場面は、第2期随一の名シーンとして視聴者の記憶に刻まれました。
バエルとの決着
最終的な戦いの結果は、純粋な勝敗では語れない複雑なものでした。キマリスヴィダールはバエルとの戦いで大きなダメージを受けながらも、マクギリスを追い詰めます。しかしマクギリスの最後は、ガエリオの手によるものではなく、追い詰められたマクギリス自身の選択に委ねられます。
「なぜ、お前は生きることを選ばないんだ、マクギリス」
復讐を遂げた後のガエリオには、達成感よりも虚脱感の方が大きかったでしょう。殺したかった相手は確かに倒れた。しかしマクギリスという存在を失うことで、ガエリオはあらためて「自分が何者であるか」を問い直さなければなりませんでした。
バリエーション/派生機 — キマリスの系譜全体図
キマリス系譜のまとめ
| 形態 | 登場時期 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| ガンダム・キマリス | 第1期序盤〜 | 宇宙戦特化、ドリルランス主武装 |
| ガンダム・キマリストルーパー | 第1期中盤〜終盤 | 地上戦対応改修、脚部強化 |
| ガンダム・ヴィダール | 第2期前半 | 正体不明、キマリスフレーム+改修外装 |
| ガンダム・キマリスヴィダール | 第2期後半 | 復讐の完成形、アイン統合、グングニルランス |
この系譜が興味深いのは、機体の進化が完全にパイロットの精神的変化と同期している点です。
- キマリス: 騎士として誇り高く戦う、貴族のガエリオ
- キマリストルーパー: 組織の命令に従いながらも自分の判断で戦うガエリオ
- ヴィダール: 正体を隠し、復讐のために計算高く動くガエリオ
- キマリスヴィダール: すべてを開示し、復讐の意志を剥き出しにしたガエリオ
バルバトスが「物語の進行と共に強くなる機体」であるとすれば、キマリスヴィダールは「パイロットの心理変化を反映する機体」と言えます。
厄祭戦時代のキマリス
厄祭戦(P.D.323年頃)において、ガンダム・キマリス(ASW-G-66)はどのように運用されたのでしょうか。型式番号の「66」が示すように、ソロモン72柱の序列第66位のキマリスの名を持つこの機体は、他のガンダムフレーム71機と共に、モビルアーマーを中心とする脅威に対抗するために投入されました。
厄祭戦後、多くのガンダムフレームが各地に散逸しましたが、キマリスはボードウィン家の管理下に置かれ、家宝として——そして戦闘力の証として——大切に保管されました。ボードウィン家の騎士たちが代々キマリスのパイロットを務めてきた伝統は、ガエリオが「キマリスの騎士」としての誇りを強く持つ背景になっています。
同世代ガンダムフレーム機との比較
キマリスヴィダールの立ち位置を理解するために、第2期に登場する主要なガンダムフレーム機と比較してみましょう。
| 機体 | 型式番号 | パイロット | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ガンダム・バルバトスルプスレクス | ASW-G-08 | 三日月・オーガス | 格闘特化。阿頼耶識との融合が深い |
| ガンダム・バエル | ASW-G-01 | マクギリス・ファリド | 序列第1位の機体。高い基本性能 |
| ガンダム・フラウロス | ASW-G-64 | シノ・ハリス | 長距離砲撃特化 |
| ガンダム・キマリスヴィダール | ASW-G-66 | ガエリオ・ボードウィン | 突撃戦法特化。阿頼耶識Type-E搭載 |
バルバトスとの対比が特に興味深い。三日月の阿頼耶識がパイロット自身の身体に犠牲を強いるものだとすれば、ガエリオの阿頼耶識Type-Eは「他者の犠牲(アイン)を利用する」ものです。どちらも「人間の限界を超えた戦闘能力」を実現しながら、そのコストの払い方が対照的——鉄血のオルフェンズらしい、残酷な対比です。
他作品・メディアでの登場
ゲーム作品
ガンダム・キマリスヴィダールは複数のゲーム作品に登場しています。
SDガンダムGジェネレーション シリーズでは、鉄血のオルフェンズシリーズの機体として実装されています。キマリスの系譜を活かした「突撃」系の特殊能力が設定されており、アイン・ダルトンの阿頼耶識Type-Eによる強化がゲームシステム上でも表現されています。ガエリオとマクギリスのユニット同士を接触させると特別なやり取りが発生するイベントが実装されているタイトルもあり、ファンから好評を得ています。
スーパーロボット大戦シリーズ では鉄血のオルフェンズ参戦作品においてキマリスヴィダールが登場。ガエリオのキャラクターが丁寧に描かれており、マクギリスとの精算がスーパーロボット大戦ならではの演出で描かれた作品もあります。
ガンダムブレイカーシリーズ では機体パーツとして実装されており、特徴的なランスや鉤爪をカスタムパーツとして使用することができます。
ガンダムエボリューション(サービス終了)では参戦こそしませんでしたが、関連するコラボ企画が展開されました。
漫画・小説展開
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ月鋼』等のコミカライズ作品でも、ガエリオとキマリスヴィダールは登場します。アニメ本編では描ききれなかった、ヴィダール時代のガエリオの心理描写が補完されており、アイン・ダルトンとの内的な対話シーンなど、原作では行間に留まっていた要素が可視化されています。
ガンプラガイド — キマリスヴィダールのキットを解説
HG(ハイグレード)1/144 HGIBO
鉄血のオルフェンズのHGキットは「HGIBO」(HG Iron-Blooded Orphans)ブランドで展開。キマリス系譜も各形態がキット化されています。
HG ガンダム・キマリス
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| スケール | 1/144 |
| ブランド | HGIBO |
| 価格(税込) | 1,320円 |
| 発売日 | 2015年 |
キマリスの基本形態を再現。細身のシルエットとドリルランスが特徴。HGIBOシリーズ共通のフレーム構造を採用しており、可動域は十分です。ドリルランスの先端部は回転ギミックを再現するためのパーツ分割が工夫されています。
HG ガンダム・キマリストルーパー
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| スケール | 1/144 |
| ブランド | HGIBO |
| 価格(税込) | 1,540円 |
| 発売日 | 2016年 |
地上戦対応の改修パーツが追加された形態を再現。脚部スラスターユニットの追加により、キマリスとはシルエットが大きく変わります。デストロイヤーランスの射撃形態への変形も部分的に再現可能です。
HG ガンダム・ヴィダール
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| スケール | 1/144 |
| ブランド | HGIBO |
| 価格(税込) | 1,540円 |
| 発売日 | 2017年(第2期放映期間中) |
第2期のヴィダール形態を再現。キマリスとは異なるダークトーンのカラーリングが特徴。内部フレームはキマリスと共通パーツを使用しており、設定を反映した構造になっています。仮面(フェイスシールド)のパーツも付属しており、顔部分を切り替えることでヴィダール時代の「素顔隠し」状態も再現可能です。
HG ガンダム・キマリスヴィダール
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| スケール | 1/144 |
| ブランド | HGIBO |
| 価格(税込) | 1,760円 |
| 発売日 | 2017年(第2期後半) |
| 付属品 | グングニルランス、ヴィダール・クロー(展開形態付き)、スラスターユニット、マーキングシール |
キマリスヴィダールの完全形態を再現した、キマリス系譜のHGキットの「決定版」です。グングニルランスの造形が精密で、保持も安定しています。スラスターユニットの羽根部分は可動式で、突撃時のダイナミックなポーズが決まりやすい設計です。
HGIBOシリーズ共通の特徴として、外装を外すとガンダムフレームの内部構造が露出します。キマリスヴィダールの場合、内部フレームは基本的なガンダムフレームに阿頼耶識Type-E対応の改修が施されたものとして設定されており、キットでもその差異が微妙に表現されています。
1/100 フルメカニクス
| キット名 | 価格(税込) | おすすめポイント |
|---|---|---|
| 1/100 フルメカニクス ガンダム・キマリスヴィダール | 3,300円 | 1/100スケールの迫力。グングニルランスのディテールが精密。スラスターユニットのフィン可動が気持ちいい |
フルメカニクスはMGに代わる鉄血シリーズの1/100スケールキットとして展開されました。外装パーツを外すとフレームが見える構造は1/100スケールならではの迫力があります。
キマリスヴィダールのフルメカニクスは、HGでは省略されがちな関節部分のディテールが細かく再現されており、より劇中の設定に近い「戦闘機械」としての質感が楽しめます。グングニルランスは全長が1/100スケールにしては非常に長く、飾り映えする仕上がりです。
ガンプラ選び方ガイド
| あなたのタイプ | おすすめキット |
|---|---|
| 入門・コスパ重視 | HG ガンダム・キマリスヴィダール(1,760円) |
| 全形態揃えたい | HGキマリス + キマリストルーパー + ヴィダール + キマリスヴィダールの4点セット |
| 1/100の存在感が欲しい | フルメカニクス ガンダム・キマリスヴィダール |
| 改造・カスタムしたい | HGキマリスヴィダールをベースに、他HGIBO機体のパーツと組み合わせる |
| ヴィダール期の仮面姿が好き | HG ガンダム・ヴィダール |
HGIBOシリーズの特性上、複数のキットを購入することで相互にパーツを組み合わせて劇中の「中間形態」を再現する楽しみ方もあります。キマリスとキマリストルーパーのパーツを混在させることで、第1期エドモントン戦の特定の場面の状態を再現するといった楽しみ方がファンの間で広まっています。
まとめ — 復讐の騎士が体現したもの
ガンダム・キマリスヴィダールは、鉄血のオルフェンズという作品の中で、ある意味で最も「人間的」な機体です。
三日月のバルバトスが「少年が世界と戦う」物語を体現する機体であるとすれば、ガエリオのキマリスヴィダールは「裏切られた人間が自分の痛みと向き合う」物語を体現する機体です。
バルバトスが「未来」に向かって突き進む機体だとすれば、キマリスヴィダールは「過去(裏切り)を清算する」ために戦う機体——この対比は、同じ鉄血世界に存在しながら、二つの機体が全く異なる「意味」を持つことを示しています。
アイン・ダルトンの阿頼耶識Type-Eを内蔵している点も重要です。一人では抱えきれない怒りと悲しみを、戦友の力を借りながら背負い続けたガエリオ。それは「弱さ」ではなく、人間として誰かと繋がろうとする意志の表れでもありました。
キマリスの系譜を辿ると、一人の人間の成長と変化の軌跡が見えてきます。
- 誇り高い貴族の騎士として戦ったキマリスの時代
- 組織と信念の間で揺れながら戦ったキマリストルーパーの時代
- 正体を隠し、復讐のみを胸に生きたヴィダールの時代
- すべてを曝け出し、宿敵に向かって突撃したキマリスヴィダールの時代
ガンダムシリーズには、主人公機の物語を「引き立てる」ためのサイドストーリーを持つ機体が多くあります。しかしキマリスヴィダールは違います。この機体は、バルバトスルプスレクスとは別の「もう一つの主役」として、鉄血のオルフェンズ第2期を支えました。
「俺は、アインと共に戦ってきた。そしてお前(マクギリス)との決着を、今ここでつける」
騎士は、最後まで騎士でした。裏切られても、傷ついても、半死半生で這い上がっても——ガエリオ・ボードウィンは自分の誇りを手放しませんでした。そしてその誇りを、キマリスヴィダールという機体が全力で体現していたのです。
ガンダム・キマリスヴィダールを「単なるライバル機」と見るか、「もう一つの主役」と見るか——その評価の差が、鉄血のオルフェンズという作品の深さを測る一つの指標になるでしょう。
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- ガンダム・バルバトス — 完全モビルスーツガイド: キマリスヴィダールの宿命の対機体。三日月とガエリオの物語を両面から理解するために。
- ガンダム・バエル — 完全ガイド: マクギリスが乗るギャラルホルンの象徴。キマリスヴィダールの最終決戦の相手。
- 『鉄血のオルフェンズ』シリーズ完全ガイド: キマリスヴィダールが活躍する作品全体の解説。
- ザク — 完全モビルスーツガイド: 量産機の原点。バルバトスやキマリスとは対極の「組織の歯車」としての機体の美学。
出典
- 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第1期 TVシリーズ、サンライズ、2015-2016年
- 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期 TVシリーズ、サンライズ、2016-2017年
- 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 公式サイト(g-tekketsu.com)
- 「キマリスヴィダール MSアーカイブス」GUNDAM.INFO
- 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 月鋼』コミカライズ、氷川へきる
- バンダイスピリッツ ホビー公式サイト(bandai-hobby.net)
- SDガンダムGジェネレーションシリーズ公式(g-generation.net)
- Gundam Wiki(gundam.fandom.com)
- Pixiv百科事典「ガンダム・キマリスヴィダール」「ガエリオ・ボードウィン」「アイン・ダルトン」
間違いや最新情報があればお知らせください。正確さを大切にしています。


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