リボンズ・アルマーク徹底解説 — イノベイドの支配者、その野望と最期

リボンズ・アルマーク徹底解説 — イノベイドの支配者、その野望と最期

導入 — 「創造主」を自称した美しき暴君

『機動戦士ガンダム00』という物語は、武力による戦争根絶を掲げるソレスタルビーイングの戦いを描いた群像劇である。だが、その壮大な計画の裏で糸を引き、物語を最終局面まで支配し続けた存在がいた。リボンズ・アルマーク――柔らかな微笑みと穏やかな物腰の奥に、人類への底知れぬ蔑みと、世界を自らの手中に収めるという果てなき野望を秘めたイノベイドである。

ガンダムシリーズの歴史において、ラスボスとは単なる「最後の敵」ではない。物語のテーマそのものを体現する存在であり、主人公が乗り越えるべき壁そのものだ。リボンズはまさにそのような存在だった。彼は「対話による相互理解」を信じる刹那・F・セイエイの対極に位置し、「人類は愚かだから導かれるべきだ」という思想を貫いた。その思想は単なる悪役の暴論ではなく、イオリア・シュヘンベルグが遺した計画の中に確かに存在した可能性の一つでもあった。

初登場時、彼は国連大使アレハンドロ・コーナーの従者として画面の片隅に佇んでいた。しかし、その正体が明かされるにつれ、ファーストシーズンで起きたすべての出来事が彼の掌の上であったことが判明する。ガンダムマイスターの選定、トリニティの投入、さらにはイオリア・シュヘンベルグの暗殺すらも、リボンズの描いた筋書きの一部だった。

セカンドシーズンでは真のラスボスとして君臨し、地球連邦政府すら傀儡と化した世界で、最後の最後まで刹那と対峙し続けた。彼の存在は、ガンダム00の物語が問いかける「人類は自ら変われるのか、それとも誰かに導かれるべきなのか」というテーマの、最も尖鋭な体現者であった。ガンダム00の物語は、リボンズ・アルマークなくして語ることができない。


プロフィール

項目 詳細
名前 リボンズ・アルマーク(Ribbons Almark)
種族 イノベイド(塩基配列パターン0026タイプ)
性別 男性型
遺伝子ベース E.A.レイ(イオリア・シュヘンベルグの友人、エターナル・アラン・レイ)
所属 ソレスタルビーイング(表向き) → イノベイター(自称)のリーダー
役職 ガンダムマイスター(元) → アレハンドロ・コーナーの秘書(偽装) → イノベイターの首魁
搭乗機 0ガンダム(GN-000) → リボーンズガンダム(CB-0000G/C) → 0ガンダム(最終決戦)
声優 蒼月昇(=古谷徹)
登場作品 機動戦士ガンダム00(1st / 2nd Season)

リボンズ・アルマークは、イオリア・シュヘンベルグの計画遂行のためにスーパーコンピュータ「ヴェーダ」によって生み出された人造人間「イノベイド」の一体である。彼の遺伝子はイオリアの友人であるE.A.レイをベースとしており、ガンダムマイスターとして運用されることを想定した「マイスター型」に分類される。イノベイドは不老であり、人間よりもはるかに長い寿命を持つ。リボンズが西暦2301年のクルジス紛争から2312年の最終決戦まで、11年以上にわたって外見が変化しないのはそのためである。

しかし、リボンズは与えられた役割に疑問を抱き、やがてイオリアの計画そのものを乗っ取ろうと画策する。ヴェーダの最高機密レベル「レベル7」へのアクセス権を持ち、その圧倒的な情報力を武器に世界を裏から操った。レベル7のアクセス権とは、ヴェーダに蓄積されたあらゆるデータ――軍事情報、技術データ、個人情報、さらには他のイノベイドの制御コードまで――を自由に閲覧・操作できる権限であり、この力こそがリボンズの支配の根幹を成していた。


人物像と性格 — 優美なる暴君の内面

リボンズの第一印象は、穏やかで知性的な青年というものだ。柔らかな口調、控えめな微笑み、そして端正な容姿。アレハンドロ・コーナーの秘書として登場した際、彼が物語の最終的な敵になると予想した視聴者はほとんどいなかっただろう。

しかし、その穏やかな外見の下には、極めて冷徹で計算高い精神が隠されていた。リボンズは自己中心的な思考の持ち主であり、当初からイオリアの計画に疑問を感じていた。「生命として自分より劣り、戦いを止められない愚かな人類のために尽くす」という使命に対し、彼は根本的な反発を覚えていたのだ。

リボンズの性格を特徴づける要素は大きく三つある。

第一に、絶対的な選民思想。リボンズは人類を「群れをなす家畜」のような存在と見なし、自分たちイノベイドこそが人類を導く資格があると確信していた。さらにその中でも、自分こそが最上位に立つべき存在であると信じて疑わなかった。他のイノベイドすら、彼にとっては道具に過ぎない。

第二に、卓越した操縦力。リボンズは直接的な暴力よりも、人を操り、利用し、使い捨てることを得意とした。アレハンドロ・コーナーを裏で操り、コーナーファミリーの財力と権力を利用してイオリア計画に介入した。地球連邦政府の統一後はアロウズを手駒として世界を支配し、ルイス・ハレヴィのGN粒子による細胞異常すらも利用して自らの陣営に引き込んだ。

第三に、致命的な傲慢さ。リボンズの最大の弱点は、自身の優越性を疑わないことだった。この傲慢さは時にユーモラスにすら映るが、最終的には彼の破滅を招くこととなる。刹那が真のイノベイターとして覚醒した時、リボンズは自分の存在意義を根底から揺るがされ、冷静さを失った。

また、リボンズの行動原理の根底には「本来使い捨てられる運命だった自身の有用性を証明したい」という切実な欲求があった。イノベイドは計画のための道具として作られた存在であり、計画が完了すれば不要になる。リボンズはその運命を拒絶し、自らの力で計画を完遂することで、自分の存在価値を世界に刻みつけようとしたのである。この点において、リボンズは単なる悪役ではなく、「存在の意味」を問い続けた悲劇的なキャラクターでもあった。


名セリフ集

リボンズ・アルマークの台詞は、その知性と傲慢さ、そして底知れぬ野心を凝縮したものが多い。蒼月昇(古谷徹)の柔らかくも底冷えのする演技が、これらの台詞に唯一無二の重みを与えている。以下に、物語の転換点となった名セリフを紹介する。

「始まるよ、イノベイター。人類の未来が」

ファーストシーズンの終盤、ついに本性を現したリボンズが放った一言。この台詞によって、それまで従者に過ぎなかったリボンズが物語の真の黒幕であることが明確になった。「イノベイター」という言葉を自らの呼称として使い始めたのもこの頃であり、人類の進化を自分が主導するという強烈な意思表明でもあった。

「人類を導くのはイノベイターではなく、この僕……リボンズ・アルマークだよ」

セカンドシーズンにおける、リボンズの思想を最も端的に表した台詞。イノベイドという種族全体の使命を超えて、「僕」という個人がすべてを掌握するという宣言である。ここにリボンズの選民思想と極端な個人主義が集約されている。集団としてのイノベイドの使命すら踏み越え、個人の野望へと昇華させた点が恐ろしい。

「そういう物言いだから、器量が小さいのさ」

アレハンドロ・コーナーに対して放った皮肉。リボンズは長らくアレハンドロの忠実な秘書を演じていたが、この台詞で主従関係が完全に逆転したことが明らかになる。散々利用した末にこの一言で切り捨てる冷酷さは、リボンズの本質を雄弁に物語っている。

「君は僕に造られたことを忘れているようだね。いわば君にとって僕は創造主」

刹那に対して放った台詞。幼少期の刹那が0ガンダムを目撃してガンダムマイスターへの道を歩み始めたこと、そしてそれをリボンズが意図的に仕組んだことを示す。刹那の人生そのものが自分の設計図の一部だと主張するこの台詞は、リボンズの支配欲の極致である。

「統一された世界の行く末は、僕に任せてもらうよ」

地球連邦政府の統一が成った後、世界の支配を宣言した台詞。すでにアロウズを通じて軍事力を掌握し、ヴェーダの力で情報を支配していたリボンズが、ついに表舞台で世界そのものを手中に収めようとする瞬間を象徴する。

「そうさ。そうでなければ、僕がつくられた意義がない。存在する意味も!」

最終決戦の中で放たれた、リボンズの内面を最も赤裸々にさらけ出す一言。冷静沈着だったリボンズが、刹那の覚醒によって追い詰められ、ついに「なぜ自分は生まれてきたのか」という根源的な問いに向き合わされる。この台詞は、リボンズが単なる支配欲の塊ではなく、「存在の意味」を求めて苦しむ存在でもあったことを示す重要な瞬間である。ガンダムシリーズの中でも、敵の動機がここまで切実に語られる場面は珍しい。


登場作品と時系列

機動戦士ガンダム00 ファーストシーズン(西暦2307〜2308年)

ファーストシーズンにおけるリボンズは、国連大使アレハンドロ・コーナーの秘書として登場する。その正体は物語の大半において隠されており、視聴者からは「何やら不穏な存在」として認識される程度だった。初登場の時点では物腰の柔らかい美青年という印象しかなく、敵か味方かすら判然としない。だがその裏では、ソレスタルビーイングのガンダムマイスター選定にまで関与し、トリニティ兄妹の投入タイミングすら計算に入れて世界情勢を操っていた。

物語が進むにつれ、リボンズがヴェーダにアクセスして情報を操作していたこと、ソレスタルビーイングの行動を裏から誘導していたこと、そしてアレハンドロすらも利用していた駒に過ぎなかったことが次々と明らかになる。リボンズはイオリア・シュヘンベルグが遺したシステムトラップ――イオリア死後に発動するGNドライヴのフルパワー解放――の存在を事前に把握し、アレハンドロにイオリア暗殺を実行させることでそのトラップを意図的に起動させた。つまり、イオリアの死すらもリボンズの計画の一部だったのである。

ファーストシーズンの最終局面では、アレハンドロがアルヴァトーレでソレスタルビーイングに戦いを挑むも敗北。リボンズはその結末を冷ややかに見届け、「器量が小さい」と切り捨てた。

ファーストシーズンで特に重要なのは、リボンズがかつて0ガンダムのパイロットとして中東クルジス共和国の紛争に介入した過去が明かされることだ。西暦2301年、KPSAの内戦に苦しむクルジスにおいて、0ガンダムが突如戦場に降り立った。この武力介入によって、少年ソラン・イブラヒム(後の刹那・F・セイエイ)はガンダムと出会い、その人生を決定的に変えられた。少年ソランが0ガンダムを見上げた際の畏敬に満ちた表情――それを見たリボンズは「この少年は使える」と判断した。リボンズは意図的に刹那をガンダムエクシアのマイスターに選定しており、刹那の運命そのものを設計した張本人だったのである。

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン(西暦2312年)

4年後のセカンドシーズンでは、リボンズは完全に表舞台へと姿を現す。地球連邦政府が統一された世界において、リボンズはヴェーダの力を用いてアロウズという独立治安維持部隊を操り、実質的な世界の支配者となっていた。

セカンドシーズンにおけるリボンズは、イノベイドの仲間たちを率いて「イノベイター」を自称し、人類の管理・支配を本格化させる。しかし、真のイノベイター(純粋種)として覚醒し始めた刹那の存在は、リボンズの存在意義を根底から脅かすものだった。

物語の最終決戦「ラグランジュ2の戦い」において、リボンズはリボーンズガンダムに搭乗して刹那のダブルオーライザーと激突。ダブルオーライザーを大破させ、純正GNドライヴの一基を奪取するなど圧倒的な戦闘力を見せつけた。しかし、リボーンズガンダムも中破し、リボンズは奪ったGNドライヴをラッセが乗り捨てた0ガンダムに搭載して再起動。一方、刹那はガンダムエクシアリペアIIに乗り換え、二人の因縁は最初の出会いの機体同士による一騎打ちで決着を迎えることとなった。

最終的にリボンズはGNビームサーベルの両手持ちで突撃するも、刹那のGNソード改にコクピットを貫かれて敗北。ヴェーダとのリンクもすでに切断されていたため、意識データの転送による復活も不可能となり、リボンズ・アルマークは完全に消滅した。

この最終決戦が0ガンダム対エクシアという構図になったことは、物語上の必然であった。リボンズが刹那に初めてガンダムを見せた機体(0ガンダム)と、刹那がガンダムマイスターとして最初に乗った機体(エクシア)の対決は、「創造主と被造物」の因縁に始まりと終わりの円環を閉じる演出として機能した。この対比の美学は、脚本の黒田洋介と監督の水島精二が意図的に仕込んだものであり、ガンダム00というシリーズのテーマ――「自分の意思で未来を切り開くこと」――を最も象徴的に表現した場面として高く評価されている。


搭乗機体一覧

機体名 型番 登場時期 備考
0ガンダム GN-000 1st Season(回想)/ 2nd Season(最終話) 初代ガンダム。クルジスでの武力介入に使用
リボーンズガンダム CB-0000G/C 2nd Season 終盤 リボンズ専用の最終決戦用ガンダム
リボーンズキャノン CB-0000G/C(キャノンモード) 2nd Season 終盤 リボーンズガンダムの砲撃形態

0ガンダム(GN-000) — すべての始まりの機体

0ガンダムは、ソレスタルビーイングが建造した第1世代ガンダムの1号機であり、文字通り「すべてのガンダムの原点」と呼べる機体である。太陽炉(オリジナルGNドライヴ)を搭載した最初の実戦用モビルスーツであり、後のガンダムエクシア、デュナメス、キュリオス、ヴァーチェへと連なる系譜の起点に位置する。

リボンズは西暦2301年、この0ガンダムに搭乗してクルジス共和国の紛争に武力介入を行った。この時、戦場にいた少年ソラン・イブラヒムが0ガンダムの姿を目撃し、その圧倒的な存在に畏敬の念を抱いたことが、後に刹那・F・セイエイとしてガンダムマイスターの道を歩むきっかけとなった。つまり0ガンダムは、刹那とリボンズ、そしてガンダム00という物語全体の出発点なのである。

最終決戦では、リボーンズガンダムが中破した後、リボンズはダブルオーライザーから奪取したGNドライヴを0ガンダムに搭載して再起動させた。因縁深きこの機体で、かつて自分が「造った」と称する刹那と最後の決着を迎えようとした。その姿は、物語の円環構造を象徴する演出として高く評価されている。

リボーンズガンダム(CB-0000G/C) — すべてを継ぐ究極の機体

リボーンズガンダムは、リボンズ・アルマークがヴェーダに蓄積されたモビルスーツの全データを結集して開発した、自らの専用機である。機体名の「リボーンズ(Reborns)」には「再生」「再誕」の意味が込められており、リボンズ自身の名前とも重なる。

最大の特徴は、ガンダムモードと砲撃特化のキャノンモード(リボーンズキャノン)という二つの形態を持つ可変機構である。ガンダムモードでは近接戦闘と機動性に優れ、キャノンモードでは大型GNバスターライフルによる圧倒的な火力を発揮する。この二つの形態を戦況に応じて瞬時に切り替えることで、あらゆる局面に対応できる万能機として設計されていた。

武装面でも、それまでのソレスタルビーイング系ガンダムの技術を集約した豪華な構成を誇る。GNビームサーベル、GNバスターライフル、GNシールド、大型GNフィンファング、そしてトランザムシステム(TRANS-AM)まで搭載しており、単機で艦隊規模の戦力を有するとされた。

セカンドシーズン最終盤、ラグランジュ2の戦いにおいて刹那のダブルオーライザーと死闘を繰り広げ、ダブルオーライザーを大破させるほどの戦闘力を見せた。しかし、刹那が真のイノベイターとして完全覚醒したことで戦況は逆転し、リボーンズガンダムも甚大な損傷を受けて最終的に放棄された。

この機体が象徴するのは、「過去のすべてを取り込み、自分一人で完結する」というリボンズの思想そのものである。あらゆるガンダムの技術を統合しながら、それを一人のパイロットが独占する――その設計思想は、リボンズの支配欲と自己完結性を機体として具現化したものと言える。

なお、機体名の「リボーンズ」と搭乗者「リボンズ」の名前が一文字違いであることは偶然ではない。リボンズが自身の名を冠した機体を造り上げたという事実は、この機体が単なる兵器ではなく、リボンズの自己表現そのものであることを示している。ガンダムシリーズにおいて、ラスボスが自らの名を機体に刻んだ例は極めて珍しく、リボンズの自意識の強さを象徴する逸話と言えるだろう。


人間関係 — 利用し、切り捨て、支配する

刹那・F・セイエイ(ソラン・イブラヒム)

リボンズと刹那の関係は、ガンダム00の物語全体を貫く最大の因縁である。

西暦2301年、0ガンダムのパイロットとして中東クルジス共和国の紛争に介入したリボンズは、戦場にいた少年ソランの前にガンダムの姿を見せた。少年の目に浮かんだ畏敬の表情を見たリボンズは、この少年を利用できると判断し、後にガンダムエクシアのマイスターとして選定する。リボンズにとって刹那は「僕が造った存在」であり、自らの計画の駒に過ぎなかった。

しかし、刹那は駒であることを拒み、自らの意思でガンダムマイスターとして成長していく。セカンドシーズンにおいて刹那が真のイノベイター(純粋種)として覚醒した時、リボンズは自分の存在意義を脅かされた。リボンズはイオリア計画を自らの手で遂行することで存在価値を証明しようとしていたが、人類が自力でイノベイターへと進化できるのであれば、イノベイドであるリボンズの存在は不要になるからだ。

最終決戦での0ガンダムとエクシアの一騎打ちは、「創造主と被造物」の関係を覆し、刹那が自らの力で未来を切り開く存在であることを証明する儀式となった。

アレハンドロ・コーナー

ファーストシーズンにおけるリボンズの表向きの主人。コーナーファミリーの当主であり国連大使でもあるアレハンドロは、イオリア計画を乗っ取って世界を支配しようと企んでいた。リボンズはその野心を利用し、忠実な秘書を装いながら、裏ではアレハンドロの行動をすべて誘導していた。

アレハンドロがアルヴァトーレで出撃し敗北した後、リボンズは「器量が小さい」と一蹴して決別する。この冷酷な切り捨ては、リボンズにとって人間という存在がいかに取るに足らないものかを象徴している。ただし、リボンズは心の底ではアレハンドロを完全に嫌っていたわけではなく、自らの野望のために切り捨てざるを得なかったことに一抹の遺憾を感じていたとも言われている。

リジェネ・レジェッタ

リジェネはリボンズと同じイノベイドであり、リボンズのグループの中でも独自の思考を持つ特異な存在だった。表面上はリボンズに従順だったが、内心ではリボンズの計画を出し抜き、自らの手で改革を成し遂げようと画策していた。

リボンズはリジェネの裏切りの意図を早くから察知していたが、あえて泳がせていた。リジェネの独立心と行動力を高く評価していた面もあったとされる。しかし最終的に、リジェネはリボンズを射殺するという直接行動に出る。だがリボンズはこの事態をも予測しており、あらかじめ用意していた予備のボディに意識を転送して復活。逆にセルゲイ・スミルノフの息子であるヒリング・ケアではなく、別のイノベイドにリジェネを始末させた。

この一連のやりとりは、リボンズがいかに先を読み、周到に策を張り巡らせる存在であったかを示すエピソードである。予備のボディに意識を転送するという行為は、イノベイドが持つ「肉体は器に過ぎない」という特性を最大限に活用したものであり、リボンズの用心深さと不死性への執着を同時に示している。

同時に、同族であるイノベイド同士の間にすら信頼関係が成立しないリボンズの世界観の冷たさをも浮き彫りにしている。リジェネとリボンズは同じE.A.レイの遺伝子から生まれた「兄弟」のような存在でありながら、互いに利用し合い、最終的には殺し合った。この関係性は、リボンズの孤独の深さを如実に物語っている。

その他のイノベイド(ヒリング・ケア、リヴァイヴ・リバイバル、アニュー・リターナー等)

リボンズの配下として活動したイノベイドたちは、いずれも彼の計画の駒に過ぎなかった。リボンズは他のイノベイドたちの遺伝子に密かにバックドアを仕込んでおり、彼らの視覚や思考に介入できるようにしていた。これにより、配下のイノベイドたちが裏切ることは原理的に不可能であった(リジェネは特殊なケースである)。

特にアニュー・リターナーのケースは痛ましい。ソレスタルビーイングに潜入していたアニューはロックオン・ストラトス(ライル)と恋に落ちるが、最終的にリボンズが彼女の意識を乗っ取って戦闘を強要し、ライルに撃墜されるという悲劇を生んだ。アニューの死は、リボンズが他者の意思や感情を踏みにじることに何の躊躇も持たないことを端的に示している。

ワン・リューミン

ワン・リューミンは、財閥令嬢であり、ソレスタルビーイングの支援者として活動しながらも、裏ではリボンズとも通じていた二重スパイ的な存在である。リボンズは彼女を通じて地球連邦政府やアロウズへの影響力を行使し、世界の裏側から情報を収集していた。

ワン・リューミンがリボンズに接近した動機は、「世界を変える」という理想への共鳴であった。既存の世界秩序に絶望し、それを根本から変革できる力を持つ存在としてリボンズに賭けたのだ。しかし、リボンズにとってワン・リューミンもまた使い捨ての駒に過ぎず、利用価値がなくなれば切り捨てられる運命にあった。最終的にワン・リューミンはネーナ・トリニティとの交戦で命を落とすが、その死にリボンズが動揺することはなかった。この無感動さは、リボンズの人間関係の本質を端的に物語っている。


声優情報 — 蒼月昇という「もう一つの名前」

リボンズ・アルマークを演じた声優は「蒼月昇(そうげつ のぼる)」とクレジットされている。しかし、その正体は初代ガンダムの主人公アムロ・レイを演じた古谷徹に他ならない。

このダブルネームの使用は、『機動戦士ガンダム00』の水島精二監督の意向によるものだった。水島監督は「古谷徹という名前がクレジットに出れば、たった一言のセリフであっても視聴者は特別な意味を読み取ってしまう」と考え、あえて別名義でのキャスティングを決定した。これは物語上の秘密を守るための演出であると同時に、古谷徹という名前が持つ圧倒的な「ブランド力」を逆手に取った巧妙な仕掛けだった。

放送期間中、蒼月昇は雑誌のインタビューに変装して登場するなど、正体の秘匿が徹底されていた。古谷徹自身も「アムロ以外のガンダムキャラクターを演じる際は本名を使いたくない」という意向を持っていたとされ、リボンズ役では別人格として演じることに意欲的だったという。

放送終了後のイベントにおいて、蒼月昇=古谷徹であることが正式に明かされた。しかし、その後もゲーム作品などでリボンズが登場する際は「蒼月昇」名義が使用され続けている。

この声優起用がもたらした効果は絶大だった。アムロ・レイは「ニュータイプの象徴」であり、ガンダムシリーズにおける「人類の可能性を体現する存在」として長年認識されてきた。そのアムロを演じた声優が、「人類は愚かだから支配されるべきだ」と主張するリボンズを演じるという構図は、ガンダムシリーズの歴史そのものに対するメタ的な挑戦であった。同じ声が、人類の希望と人類への絶望を同時に体現する――この重層的な演出は、ガンダム00の物語に深みを与える重要な要素となった。


文化的影響 — ガンダム史に刻まれた「美しき敵」

リボンズ・アルマークは、ガンダムシリーズの歴代ラスボスの中でも独特の位置を占めるキャラクターである。

従来のガンダムシリーズにおけるラスボスは、シャア・アズナブル(逆襲のシャア)、ハマーン・カーン(ZZ)、クルーゼ(SEED)など、いずれも人間としての複雑な背景と感情を持つキャラクターだった。リボンズはイノベイドという人造人間であり、「人間ではない存在が人間を支配しようとする」という構図は、シリーズの中でも異色のものである。

しかし同時に、リボンズには「自分の存在意義を証明したい」という極めて人間的な欲求があった。この矛盾――人間を蔑みながら、人間的な承認欲求に突き動かされる――がリボンズというキャラクターの魅力の核心である。

視聴者の間では、リボンズの「涼やかな外見と冷酷な内面のギャップ」が高く評価されており、ガンダムシリーズの悪役としての人気も高い。特に最終決戦における0ガンダムとエクシアの一騎打ちは、シリーズ屈指の名場面としてファンの記憶に深く刻まれている。

リボンズが体現するテーマは、「進化と支配」「人類の可能性と限界」「AIと人間の関係性」など、現代社会にも通じる普遍的な問題意識を含んでいる。ヴェーダという超高性能コンピュータを掌握し、情報の力で世界を支配しようとしたリボンズの姿は、AIが社会を変革しつつある現代においてこそ、新たなリアリティを持って受け止められるのではないだろうか。

また、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)市場においても、リボーンズガンダムはその独特のデザインと変形機構から人気の高いキットとなっている。HG(1/144スケール)をはじめとする複数のグレードで商品化されており、リボンズの存在感はアニメの枠を超えて立体造形の世界にも広がっている。

さらに、スーパーロボット大戦シリーズやGジェネレーションシリーズといったゲーム作品にも多数登場しており、その度に「蒼月昇」名義での音声が収録されている。ゲーム作品においてもリボンズの傲慢な言動は再現され、プレイヤーから「倒しがいのあるラスボス」として人気を集めている。

ガンダムシリーズ全体を見渡した時、リボンズ・アルマークはシャア・アズナブルやフル・フロンタルとも異なる新しいタイプの敵役として、西暦(Anno Domini)シリーズの個性を確立する上で不可欠な存在だったと言える。彼がいなければ、ガンダム00の物語は「対話と理解」というテーマを語りきることができなかっただろう。対話を拒み、支配のみを信じた者の末路を描くことで、初めて「分かり合うこと」の意味が浮き彫りになるのだから。


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出典

  • 機動戦士ガンダム00 ファーストシーズン(2007年10月〜2008年3月放送、全25話)
  • 機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン(2008年10月〜2009年3月放送、全25話)
  • 劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-(2010年公開)
  • 機動戦士ガンダム00 公式サイト(https://www.gundam00.net/)
  • ガンダムチャンネル キャラクター紹介(https://www.gundam-c.com/)
  • 月刊ガンダムエース(角川書店)各号インタビュー記事
  • 機動戦士ガンダム00 メカニカルコンプリート(双葉社)
  • 機動戦士ガンダム00 オフィシャルファイル(講談社)
  • 機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン コンプリートベスト(サウンドトラック)

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