ラプラス事変の「影」を描く短編作品——Twilight AXISとは
2017年、ガンダムファンクラブの会員限定コンテンツとして静かに登場したショートアニメがある。『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』——全6話、1話あたり数分という超短編の作品だ。
知名度こそ高くないが、この作品が切り取る視点はユニークだ。『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』が描いた「ラプラス事変」が終結してから数か月後のUC0096年。事変の後に廃墟と化した小惑星アクシズを舞台に、元ジオン系の技術者とテストパイロットが静かな調査任務を遂行しようとする——そんな地味で、だからこそリアルな物語だ。
派手な主人公機の活躍も、超人的なニュータイプの覚醒もない。あるのは廃墟に漂う過去の残滓と、その場所に因縁を持つ人々の心の揺れ。宇宙世紀の「その後」に何が残ったのかを問う、小品ながら深みのある作品だ。
作品基本情報
| 正式タイトル | 機動戦士ガンダム Twilight AXIS |
|---|---|
| 英題 | Mobile Suit Gundam: Twilight AXIS |
| 形式 | ONA(オリジナル・ネット・アニメーション)全6話 |
| 配信期間 | 2017年6月23日〜2017年9月1日 |
| 劇場版タイトル | 機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤き残影 |
| 劇場公開日 | 2017年11月18日 |
| 監督 | 多田文雄 |
| キャラクターデザイン | 清水洋 |
| メカニックデザイン | 海老川兼武、形部一平 |
| 音楽 | 中川幸太郎 |
| 制作 | サンライズ |
| 原作 | 中村浩二郎(Web小説「矢立文庫」にて連載) |
| 時代設定 | 宇宙世紀0096年(ラプラス事変終結後) |
| 舞台 | 小惑星アクシズ(地球圏漂流中) |
| 配信先 | ガンダムファンクラブ(独占先行配信) |
原作は「矢立文庫」のWeb小説
アニメ化の前に、サンライズが運営するWeb小説サイト「矢立文庫」で原作小説が連載されていた。脚本を手がけた中村浩二郎は、『蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ』の脚本でも知られる人物だ。Web小説全10章(全20回)が2016年から2017年にかけて配信され、その後アニメ化に至った。
制作背景——なぜ「アクシズ」を舞台にしたのか
宇宙世紀の「空白地帯」を埋める試み
Twilight AXISが企画された背景には、宇宙世紀ファンの間で長年語られてきた「その後どうなったのか」という問いがある。
『逆襲のシャア』(UC0093年)でシャアがアクシズ落としを試み、ニュータイプの奇跡によって阻止された後——廃墟と化したアクシズは宇宙を漂い続けた。3年後にはラプラス事変(UC0096年)が起き、宇宙世紀の秩序が揺らいだ。そのさらに数か月後、アクシズには何が残っていたのか。
公式の主要作品がどれも描かなかった「廃墟の後日談」を、短編フォーマットで掘り下げようとしたのが本作の出発点だ。
「ガンダムファンクラブ」という限定配信の意義
本作が当初ガンダムファンクラブの会員限定コンテンツとして配信されたことは、内容とよく一致している。派手な新キャラや新主人公機で新規ファンを取り込む商業的な役割ではなく、宇宙世紀の積み重ねを知るファンに向けた「深掘りコンテンツ」として制作されたからだ。
その分、作品はマニア向けの細かい設定へのこだわりを惜しまない。サザビーの残骸、シャアのパーソナルカラーに塗られたザクIII改、UC0096年のアクシズの状態——知識があるほど楽しめる仕掛けが随所にある。
スタッフの宇宙世紀への深い理解
メカニックデザインを担当した海老川兼武と形部一平は、ガンダムUCの機体デザインにも携わったデザイナーだ。両者がトリスタン(アレックス改修機)を担当したことで、「NT-1アレックスのDNAを持ちながら、時代の変化を経て継ぎ接ぎされた改修機」というコンセプトが視覚的に説得力を持つ形で表現された。
あらすじ——廃墟のアクシズに潜む「残影」
第1〜2話:任務の始まり
宇宙世紀0096年後半。「ラプラス事変」と呼ばれた宇宙世紀憲章をめぐる戦いが終結して数か月が経過した。
事変の中でサイコフレームという技術が世界の目に晒された。既存の兵器体系を根本から覆す潜在能力を持つその技術に、地球連邦政府は強い脅威を感じた。連邦情報部のメーメット・メルカ中尉は、上層部の命を受けて特殊部隊「マスティマ」を編成する。
任務は、地球圏を漂う小惑星アクシズの分断された片側への潜入調査だ。目的は、かつてアクシズ内に存在したとされるサイコフレーム研究施設の調査と、機密情報の回収。
マスティマには、特殊な人材が案内役として加わった。元ジオン系の技術者アルレット・アルマージュと、テストパイロットのダントン・ハイレッグ。二人はアクシズの内部構造を熟知した数少ない民間人として招集された。アルレットにはもう一つの理由があった——かつてこの場所に残してきた「シャアへの想い」だ。
第3〜4話:廃墟の中の戦闘
マスティマはアクシズに潜入した。そこは第二次ネオ・ジオン抗争で損壊し、長く無人のままとなっている宇宙の廃墟だ。
しかし、誰もいないはずのアクシズで、彼らは強襲を受ける。
私兵集団「バーナム」が送り込んできた新型ガンダム——RX-78AN-01「トリスタン」。一年戦争時の試作機であるガンダムNT-1(アレックス)を改修・強化した機体を駆るのは、サイバーニュータイプのクエンティン・フェルモだ。
なぜバーナムはこの廃墟に現れたのか。彼らの目的はサイコフレームの技術的遺産の回収か、それとも別の何かか。マスティマとバーナムの思惑が交錯する中、廃墟の中での戦闘が始まる。
アルレットとダントンは、アクシズの格納庫に眠っていたザクIII改で応戦する。かつてアルレットがシャアのために用意し、シャアのパーソナルカラーである赤に塗装された機体だ。
第5〜6話:「赤き残影」への帰還
戦闘の最中、アルレットはアクシズの表面に漂う残骸を見つける。
サザビーの残骸——UC0093年の「アクシズ落とし」でシャアが乗り、そのまま宇宙に散ったモビルスーツの亡骸。事変からすでに3年が経過したが、それはまだアクシズの表面に漂い続けていた。
アルレットはサザビーの残骸に向かう。シャアへの複雑な感情を胸に抱きながら——憧れであり、怒りでもあり、悲しみでもある感情を。その行動が物語の感情的な核心だ。
バーナムのトリスタンとの戦いは続き、やがてクルヴァルとの合体戦闘へと展開する。ダントンは熟練の技術でザクIII改を操り、マスティマを守りながら戦闘を乗り切ろうとする。廃墟の宇宙で交わる過去と現在——物語は静かに、しかし確実に終幕へと向かう。
宇宙世紀タイムラインとの接続
Twilight AXISを理解する上で、宇宙世紀の流れを知っておくと物語の深みが増す。詳しい年表は宇宙世紀年表を参照してほしい。
| UC0079年 | 一年戦争。シャアがジオン軍のエースパイロットとして活躍 |
|---|---|
| UC0087〜0088年 | 第一次ネオ・ジオン抗争(『Z』『ZZ』の時代)。アクシズがジオンの拠点となる |
| UC0093年 | 第二次ネオ・ジオン抗争(『逆襲のシャア』)。シャアがアクシズ落としを試みる。ニュータイプの力でアクシズが押し返される |
| UC0096年前半 | ラプラス事変(『UC』の時代)。サイコフレームが世界に晒される |
| UC0096年後半 | 【Twilight AXIS】アクシズ調査任務。マスティマが潜入し、バーナムと交戦 |
ポイントはUC0093年の「アクシズ落とし」だ。シャアは地球にアクシズを落とそうとしたが、アムロとニュータイプたちの力によって阻止された。その際、アクシズは分断されて宇宙に漂い始め、廃墟となった。
Twilight AXISが舞台とする「アクシズの片割れ」は、まさにその分断されたアクシズだ。シャアの野望の痕跡が染みついた宇宙の廃墟——そこにアルレットはシャアへの「想い」を胸に赴く。この背景を知るほど、物語の情感は深まる。
登場人物
アルレット・アルマージュ
| 所属 | 元ジオン公国軍付属技術者 → 民間人(清掃業) |
|---|---|
| 職歴 | モビルスーツ開発者。サザビーの開発に関与 |
| 声優 | 清水理沙 |
本作の実質的な主人公。天才的な技術者でありながら、事変後は静かな日常を送っていた女性だ。アクシズへの調査任務を依頼されたのは、施設の構造や開発計画の詳細を知る数少ない人物だったからだ。
彼女の経歴は特異だ。ジオン公国時代、最高の技術者の一人としてサザビーの開発プロジェクトに携わった。しかしそのサザビーを駆るシャアは、UC0093年に地球への「アクシズ落とし」を試み——ニュータイプの奇跡によって阻まれ、そのまま宇宙に散った。
シャアへの感情は単純ではない。崇拝に近い敬意、彼の思想への共感、しかしアクシズ落としという「地球への復讐」に向かった末路への複雑な思い。技術者として彼のために作り続けた機体が、結局は彼を廃墟の宇宙に連れ去った——そのやりきれなさ。
アクシズの表面に漂うサザビーの残骸——かつてシャアが乗ったモビルスーツの亡骸に向かうアルレットの行動が、物語の感情的な核心をなす。廃墟への旅は、彼女にとって「過去との決別」であり「シャアへの弔い」だ。
ダントン・ハイレッグ
| 所属 | 元ジオン系テストパイロット → 民間人(清掃業) |
|---|---|
| 搭乗機 | ザクIII改、R・ジャジャ |
| 声優 | 阪口周平 |
アルレットとともにリボーコロニーで清掃業を営む、元テストパイロット。華々しいエース伝説はないが、経験と技術を持つ職人的なパイロットだ。
ダントンにもアクシズへの因縁がある。かつてテストパイロットとして、この場所での開発・試験飛行に関わった記憶。ジオンという組織の中で歯車の一つとして生き、戦争が終われば民間人として日常に戻った——そういう「普通の人間」の代表だ。
アルレットを守るという意志を持ちながらも、自身の過去とも向き合うことになるこの任務。戦闘ではザクIII改やR・ジャジャを操り、マスティマの護衛として奮戦する。派手さはなくとも、職人の矜持でその場を切り抜けようとする姿が印象的だ。
メーメット・メルカ
| 所属 | 地球連邦軍情報部 |
|---|---|
| 階級 | 中尉 |
| 声優 | 小野大輔 |
マスティマを編成・指揮する連邦情報部の将校。アルレットとダントンを民間人の案内役として招集した人物。
任務遂行に向けて冷静に動くプロフェッショナルだが、アクシズ内での想定外の事態——バーナムの介入——に直面し、臨機応変の対応を迫られる。連邦軍の組織論理と現場の混乱の狭間で、冷静さを保つことを強いられるキャラクターだ。
声優の小野大輔は『機動戦士ガンダムUC』でシナンジュを駆るフル・フロンタルを演じており、宇宙世紀作品への出演が続く。メルカとフロンタルは立場も性格も異なるが、同じ宇宙世紀0096年という時代を生きる人物として、作品の連続性を感じさせるキャスティングだ。
クエンティン・フェルモ
| 所属 | バーナム(私兵集団) |
|---|---|
| 搭乗機 | RX-78AN-01 ガンダムAN-01「トリスタン」 |
| 声優 | 増田俊樹 |
謎の私兵集団「バーナム」が送り込んだサイバーニュータイプ。連邦軍のオーガスタ・ニュータイプ研究所出身とされるが、詳細な経歴は不明だ。
サイバーニュータイプとは、科学的・人工的な手法でニュータイプに近い感応能力を付与しようとした実験の産物だ。オーガスタ研究所はガンダムシリーズの宇宙世紀において複数の作品に登場するが、その実験の被験者たちは精神的な不安定さを抱えることが多い。クエンティンも例外ではないことが、物語の中で示唆される。
なぜアクシズに現れたのか、バーナムとはいかなる組織なのか——多くが謎のまま物語は進む。この「謎の多さ」は、限られた尺の中での宇宙世紀の広がりを示すと同時に、原作小説への誘導にもなっている。
登場モビルスーツ
RX-78AN-01 ガンダムAN-01「トリスタン」
| 型式番号 | RX-78AN-01 |
|---|---|
| 通称 | トリスタン(Tristan) |
| 所属 | バーナム |
| パイロット | クエンティン・フェルモ |
| ベース機 | RX-78NT-1 ガンダムNT-1(アレックス) |
| 頭頂高 | 約18m(推定) |
| 武装 | 腕部ガトリング砲、長砲身ビームライフル、ビームサーベル×2 |
| 特殊装備 | チョバム・アーマー(一部残存) |
一年戦争末期に開発された試作ニュータイプ用ガンダム「アレックス(RX-78NT-1)」を改修・強化した機体だ。頭部・胸部・バックパックなどは新規パーツで構成されつつ、他のガンダム系機体のジャンクパーツも組み合わされた継ぎ接ぎの構造が特徴的だ。
アレックスからの主な変更点:
– 頭部デザインを刷新(よりゴツい印象に)
– チョバム・アーマーを一部廃止・改修
– バックパックを換装し推力を強化
– 長砲身ビームライフルを新規装備
– 全体的にジャンクパーツの寄せ集め感が増し、「廃墟で動く改修機」という印象
名前の「トリスタン」は中世の騎士道物語に登場する騎士にちなむ。ワーグナーのオペラ『トリスタンとイゾルデ』との関連も示唆される命名だ。廃墟のアクシズで現れる「ガンダムの成れの果て」という文脈と、悲恋の騎士トリスタンのイメージは重なる。
さらに、このトリスタンを中核に据えた大型武装基地「RX-78KU-01 クルヴァル」が存在する。バーナムが運用するこの合体兵器は、トリスタンと組み合わさることで圧倒的な戦闘力を発揮する。クルヴァルという名もまた、ワーグナーのオペラ登場人物に由来する。
MS-Z-008 ザクIII改(赤)
| 型式番号 | MS-Z-008 |
|---|---|
| 名称 | ザクIII改 |
| 所属 | (元ネオ・ジオン系) |
| パイロット | ダントン・ハイレッグ |
| カラー | 赤(シャアのパーソナルカラー) |
| 頭頂高 | 約21.0m |
| 武装 | ビームライフル、ビームサーベル、シールド |
第一次ネオ・ジオン抗争期(UC0087〜0088年)に開発された高性能モビルスーツ。「ザク」の名と思想を受け継ぐ汎用機として設計されながら、デルタガンダムの技術も取り込んだ高機動設計が特徴だ。
本作に登場する機体は、かつてアルレットがシャアのために用意していたという特別な来歴を持つ。シャアのパーソナルカラーである赤に塗装され、チューニングもシャアの操縦スタイルに合わせて施されている。そのため癖が強く、一般のパイロットには扱いにくい仕様だ。
この機体が持つ意味は大きい。
シャアのために作り、シャアのために調整し、シャアのカラーに塗った機体——しかしシャアは結局この機体に乗ることなく、UC0093年に宇宙に散った。アルレットが守り続けてきたこの「赤い機体」は、彼女のシャアへの感情そのものの象徴だ。廃墟のアクシズでダントンがそれを駆る場面には、過去と現在が交差するような感慨がある。
R・ジャジャ
第一次ネオ・ジオン抗争時代のモビルスーツ。キャラ・スーン専用機として知られ、ジオ系統の系譜を持つ高機動型機体だ。ダントンが戦闘において搭乗する場面もあり、アクシズでの戦闘を支える役割を担う。旧世代の機体でありながら、熟練の操縦技術がそれを補う。廃墟の中に眠っていた機体という設定が、アクシズという場所の「時が止まった」感覚をより強める。
本作の見どころと独自の魅力
「廃墟」という舞台が持つ意味
ガンダムシリーズの舞台として「廃墟」が選ばれることは、実は珍しい。多くの作品は戦場、コロニー、艦隊内など「現在進行形の動き」がある場所を舞台にする。
アクシズという廃墟は「かつての戦場の骸」だ。UC0079年の一年戦争からUC0087〜0088年の第一次ネオ・ジオン抗争、そしてUC0093年のアクシズ落とし——この場所には宇宙世紀の最も激しい歴史が重なっている。その廃墟を「今、歩く人たち」の視点から描くことで、宇宙世紀の歴史が「リアルな重み」として感じられる構成だ。
アルレットがサザビーの残骸を見つける場面は、その象徴だ。シャアが乗り、シャアと共に宇宙に散り、そのまま3年間漂い続けたモビルスーツ。廃墟の宇宙空間に浮かぶその残骸を見つめるアルレットの表情には、言葉では表現されない複雑な感情が宿る。
アルレットとシャアの「関係性」の深み
本作の最大のテーマは、アルレットとシャアの「一方通行の関係性」だ。
シャアはこの作品に直接登場しない。しかし彼の「痕跡」は随所にある。赤いザクIII改、サザビーの残骸、アクシズという場所そのもの——全てがシャアを想起させる。アルレットはそれらの「痕跡」と向き合うことで、自分の中のシャアへの感情を整理しようとする。
技術者として彼のために働き、彼のために機体を作り続けた。しかしシャアは最終的に地球への復讐という狂気に向かい、宇宙の彼方に消えた。アルレットはその結末を「肯定」も「否定」もできない。ただ受け止めるしかない——その不完全な感情の決着が、本作の感情的な核心だ。
配信・視聴ガイド
Web配信(ショートアニメ)
本作は全6話のショートアニメとして、ガンダムファンクラブにて独占先行配信された。1話あたりの尺は数分という超短編フォーマットだ。2017年6月23日から9月1日にかけて、ほぼ隔週ペースで配信された。
劇場版「赤き残影」
Web配信版全6話に新作シーンを加え、再編集した劇場版「機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤き残影」が2017年11月18日に劇場公開された。上映時間は約50分で、短編ながら映画館で観る体験として提供された。
「赤き残影」というサブタイトルは、赤く塗装されたザクIII改と、廃墟の宇宙空間に漂うサザビーの残骸——そして物語が呼び起こす「過去の記憶」を重ねたものだろう。残影とは「消えた後に残る影」。シャアという人物が宇宙世紀に落とし続けた影を、アルレットの目を通して見つめる作品にふさわしいタイトルだ。
現在の配信状況(2026年)
劇場版「赤き残影」はBlu-ray Discとして発売されており、Amazon Prime Videoなどでレンタル・視聴が可能だ。バンダイチャンネルや各種配信プラットフォームでも取り扱いがある。最新の配信状況は各サービスの公式サイトで確認してほしい。
視聴のコツ
- ガンダムUCを先に観ることを強くすすめる。ラプラス事変、サイコフレーム、そして「逆襲のシャア」でのアクシズ落としの経緯を知ることで、Twilight AXISの背景が立体的に見えてくる。
- 劇場版「赤き残影」は約50分で見終わる。短い作品なので、UC視聴後の「後日談」として気軽に観るのが最適だ。
- 派手な戦闘より、廃墟の静けさと人物の内面に注目する視点で観ると、作品の魅力が増す。
- 原作小説(矢立文庫)も読むと理解が深まる。アニメで省略された設定や人物の内面描写が補完されており、アクシズ調査任務の全貌が見えてくる。
UCシリーズにおける位置づけと意義
Twilight AXISは、宇宙世紀の大きな物語の「隙間」を埋める作品だ。
ガンダムUCが「ラプラス事変」という大事件の内側を描いたとすれば、Twilight AXISはその事変が終わった後の「静けさの中にある余波」を描いている。英雄が去り、戦いが終わり、廃墟だけが残った宇宙——そこに生き残った者たちが何を抱えて生きているか。
特にアルレットのキャラクターは、宇宙世紀の「一般的な登場人物」の象徴でもある。シャアという偉大な人物に関わり、その思想に影響を受け、しかし時代が変わっても日常を生きていく女性。彼女がサザビーの残骸に向かう場面には、一年戦争からUCに至るまでの宇宙世紀全体への「鎮魂」の意味がある。
「逆襲のシャア」との対比も興味深い。
「逆襲のシャア」ではアムロとシャアという二人の天才が、地球とスペースノイドの未来をかけて戦い、どちらも宇宙の彼方に消えた。その「神話的な決着」の後、現実の宇宙世紀はどうなったのか——廃墟に残された普通の人々は何を背負って生きるのか。Twilight AXISはその問いに「静かに、丁寧に」答えようとする作品だ。
規模は小さくとも、Twilight AXISが宇宙世紀ファンから一定の支持を得ている理由は、まさにそのような「戦争の後」を丁寧に掬い上げる視点にある。
スタッフ・キャスト
主要スタッフ
| 監督 | 多田文雄 |
|---|---|
| 原作・脚本 | 中村浩二郎(矢立文庫掲載の原作小説) |
| キャラクターデザイン | 清水洋 |
| メカニックデザイン | 海老川兼武、形部一平 |
| 音楽 | 中川幸太郎 |
| 制作 | サンライズ |
メカニックデザインを担当した海老川兼武と形部一平は、ガンダムUCや他の宇宙世紀作品でも活躍したデザイナーだ。トリスタンとクルヴァルのデザインは、アレックス(NT-1)の系譜を踏まえながら、改修機らしい「継ぎ接ぎ感」のある重厚なシルエットが特徴だ。
キャラクターデザインの清水洋は、アルレットを「技術者らしい知性と、シャアへの感情を秘めた繊細さ」が共存するルックスで描いた。派手なヒロイン像ではなく、どこかに疲れと覚悟を持ち合わせた成熟した女性の造形は、本作のトーンに合致している。
主要キャスト
| アルレット・アルマージュ | 清水理沙 |
|---|---|
| ダントン・ハイレッグ | 阪口周平 |
| メーメット・メルカ | 小野大輔 |
| クエンティン・フェルモ | 増田俊樹 |
小野大輔は『機動戦士ガンダムUC』でシナンジュを駆るフル・フロンタルを演じており、UCシリーズとの連続性を感じさせるキャスティングだ。増田俊樹は後年『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のギルベルト役など数多くの主演作を持つ声優であり、クエンティンというミステリアスなキャラクターを抑制した演技で表現した。
まとめ——廃墟に刻まれた宇宙世紀の残照
『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』は、地味で小さな作品だ。ガンダムシリーズの中で広く語られる機会が多いわけではない。
しかし、宇宙世紀という長大な歴史の「その後」を生きる人々の物語として、この作品は独自の価値を持つ。大事変が終わった後も、廃墟は宇宙に漂い続け、生き残った者は日常を取り戻しながらも過去を抱えて生きる——そのリアルな「余韻」こそ、Twilight AXISが描こうとしたものだ。
ガンダムUCを愛するファンにとっては、ラプラス事変の後日談として見逃せない一作だ。シャア・アズナブルという人物の「影」が宇宙世紀に落とし続けたものを、静かに見つめ直す機会として、本作は今も価値を持ち続けている。
約50分の劇場版「赤き残影」から気軽に触れてみることをおすすめする。派手さはなくとも、観終わった後に宇宙世紀の広がりと深みをじわりと感じさせてくれる——そういう種類の作品だ。
「誰もが知っている作品」ではなくていい。
知る人ぞ知る小品として、Twilight AXISは宇宙世紀の物語をひっそりと補完し続ける。シャアが去った後の宇宙世紀を生きた、名もなき人々の物語として——それだけで、この作品は存在する意義を持つ。
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出典
- 『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』ONA全6話、サンライズ、2017年
- 『機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤き残影』劇場版、サンライズ、2017年
- 原作小説「機動戦士ガンダム Twilight AXIS」中村浩二郎、矢立文庫、2016〜2017年
- 『機動戦士ガンダムUC』OVA、サンライズ、2010〜2014年
- 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』劇場版、サンライズ、1988年
- GUNDAM.INFO(gundam.info)
- Gundam Wiki(gundam.fandom.com)
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